煙は現場活動において、内部の情報を知るために非常に重要な役割を果たします。
煙の濃さ、色、上昇速度など、これらを確認(サイズアップ)し、推測を立てて、活動を行うわけです。
何が燃えているか、どこが一番燃えているか、どれくらい経過しているといえるか、空気の流入は十分かなどの様々な予測を立てながらなので、そのための予備知識として持っておきましょう。
ただ、構造や燃焼範囲においても煙の特性は変わってきます。その点に留意しながら、観察を行っていくことが重要です。
煙の色
煙の色には、よく白煙や黒煙などで分類されることが多いです。
燃料(燃えているもの)として多いのが、炭素、水素、酸素、窒素、塩素、フッ素、臭素が考えられます。
白煙
白煙の条件は、完全反応、完全燃焼と空気の流入が十分な場合に生成されます。
燃焼生成物(燃焼によって生成される物質)としては、二酸化炭素、水素、酸素、窒素、塩素、フッ素、臭素が生成されます。
また、放水した後にも、白い煙が発生します。あれは、水が蒸発した水蒸気がほとんどです。
見分け方としては、上昇しているかどうか(水蒸気は空気よりも重たいため、すぐに降下する)と若干透き通っているので、白煙との判別は必要です。
黒煙
黒煙の条件は、不完全反応、不完全燃焼と空気の流入が過剰もしくは不十分な場合に生成されます。黒煙の黒の正体は主にすすです。
燃焼生成物
空気が過剰な場合:二酸化炭素、一酸化炭素、すす、シアン化水素、塩化水素、フッ化水素、臭化水素
空気が不十分:過剰の場合と同じですが、一酸化炭素、すす、炭化水素が多く生成されます。
煙の速度
煙の速度に関しては、気体の体積膨張が大きく関係してきます。別のページで圧縮性物質と非圧縮性物質について記しました。
煙の速度は体積変化によって変わります。
体積変化について、外部からの圧力により変わるものと変わらないものがあります。
外部からの圧力以外に体積変化をさせるものは、温度です。
水での説明が分かりやすいですが、水は100度以上になると、水蒸気になります。水蒸気になった時点で、体積量は1700倍といわれています。
このとき原子数は変わりません。
原子数が変わらずに、体積が形を変えるため、中の原子が動き回れる、余裕の状態になるので、密度が低くなります。
その結果、軽くなるので、上昇していきます。
図で表すとこんな感じです。
これは、空気でも同じ現象が起きています。
温度が高くなれば、体積が大きくなりますが、原子数は変わらないので、中の密度が低いため、体積量に対して軽くなるので、暖かい空気は上昇します。
空気と水の違うところは、熱伝達速度です。
水は伝わりにくく、空気は伝わりやすいのが特徴です。
なので、暖かい空気は上昇する速度は速いのですが、上昇するにつれ、熱温度を失うと、速度が遅くなります。
長々説明しましたが、要は温度が高ければ上昇速度は速く、温度が低ければ上昇速度は遅いということです。
煙の濃さ
結論から書くと、煙の濃さは堆積した時間を表しています。
屋内において煙は上昇し、天井に到達して逃げる場所がなければ、あとから生成される煙と重なり堆積していきます。
堆積した煙は、どんどん濃くなっていき、下降していきます。当たり前ですね。
下降というより、温度が高い気体はより上部へいくため、堆積した煙の中で温度の高い煙がより上部になり、それまでの古い煙が下へと追いやられるという感覚です。
その下降したときに開口部があればそこから外部へ噴出します。つまり、煙の濃さは、煙の堆積量によって変わり、それは、時間経過とともに変化していくということです。
濃い煙は燃焼時間が経過していると観察できます。
まとめ
いかがでしたか?
これで煙の観察が大まかにできると思います。
現場では何が燃えているか、どのような建物構造(内部)が分からないため、確実とは言えませんが、判断材料にはなります。
煙は色々な情報を持っているため、建物火災においても北面と南面から噴出する、煙の色、速度、濃さは違ってきていることから、どちらから消火し、隊員の命を守るため、どの方向から屋内進入することが望ましいかを推測することができます。
例えば、建物東側からの黒煙で速度が速く、色が薄い、建物西側からは白煙の速度が遅い、色が濃い煙が発生している現場に遭遇した際、どういった判断をし、どういった決断から、指示の方法、活動をするでしょうか。
簡単な頭上訓練でも問題ありません。隊においての共通認識を持つため、どういった場合においてどういった判断をするかを決めておくと、活動時に意見が分かれることはないと思います。