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熱の伝わり方の伝熱と熱流束を知ることにより、火災戦術及び消火作業に入る前の判断材料にもなります。
熱は暖かいところから冷たいところへ移動していきます。その熱の移動する速度は温度差や物質によっても変化し、伝わり方も関係してきます。
といいつつ、計算式が多いです。が、ここでは計算式を理解するのではなく、熱の伝わり方の種類を大まかに理解していきましょう。
※公式は、あくまでも実験から得られた数値による近似値を変数で表したものなので、火災による変異の条件にすべて当てはまるとは限りません。
熱が伝わる:伝熱
熱が伝わる総称を伝熱といいます。
伝熱は、伝導、対流、放射の総称としていわれています。これらをすべて含んで伝熱といいます。
伝導及び放射の法則が伝熱と大きく関係します。
物体の中を通る熱の流れが温度差と関係(比例)し、熱伝導の法則が公式として存在します。
また、対流は伝導の動流体として分類されています。
分けて説明するとこんな感じです。
- 伝導:壁を通して熱を通す
- 対流:熱の気体的流れから固体に熱伝達する
- 放射:壁から少し離れたところで熱を感じる
伝熱は全て熱流速で表します。
熱流速はW/㎡という単位で、1秒に1㎡進む熱量を表しています。
伝導とは
例えば、屋内の壁を暖めた場合、外側に熱が伝わっていきます。この壁の中を熱が伝わる過程を伝導といいます。
壁の中では熱を与えられ、原子間の動きが速くなり、衝突することで熱を持ちます。その結果熱が壁の中を伝わるという仕組みです。
熱伝導の公式は存在します。
q=kA(T2-T1)/l
日本語で表すと
熱流束=熱伝導率×熱が伝わる面積×(壁の表面温度A-壁の表面温度B)÷壁の厚さ
実際、これを活動で使うとなると少し厳しいです。
火災時は、何が燃えているかも分からず、形も不明確、積み重なっている量からしても浸透時間を明確にすることはできません。
熱が存在する壁側から裏側までの熱の浸透する時間を大まかに推定するにはこちらの公式を使います。
熱浸透時間=(壁の厚さ)の2乗÷{16×(熱伝導率÷密度×比熱)}
熱物性表
材料 | 熱伝導率 W/mK | 比熱 Kj/kgK | 密度 kg/㎥ |
銅 | 387 | 0.38 | 8940 |
コンクリート | 0.8‐1.4 | 0.88 | 2100 |
ガラス | 0.76 | 0.84 | 2700 |
石綿板 | 0.15 | 1.05 | 577 |
オーク(木) | 0.17 | 2.38 | 800 |
これらの値で壁の厚さを代入すれば、大まかな熱浸透時間が算出されます。
対流とは
対流とは、液体と気体が(流体)が動くとき、固体表面への伝熱が対流といいますが、上位互換は伝導になります。
例えば、熱を持った煙上昇する際に壁や天井の表面にも熱が伝わります。その煙によって伝わる熱エネルギーが対流といいます。
伝導の中に対流があると考えて差し支えありません。
対流熱伝達率
流動状態 | h(W/㎡℃) |
空気中の浮力 | 5-10 |
マッチ | ~30 |
液面燃焼表面乱流層 | ~20 |
天井に衝突する火災プルーム (浮力による上昇気流) | 5-50 |
風速2m/sの風 | ~10 |
風速35m/sの風 | ~75 |
ここでの対流の熱流束を与える流体の式は
熱流束=対流熱伝達率×(気体温度‐壁温度)
で求められます。
例:30℃の壁に対して、火炎温度が1000℃のとき、自由対流としてhは空気中の浮力5を活用すると
5×(1000-30)=4850W/㎡となります。
熱流速はW/㎡という単位で、1秒に1㎡進む熱量を表しています。
当たり前ですが、h10を活用すると2倍になります。
対流熱流速の求め方は少し分かりやすいですね。
放射
すべての放射は、電場と地場の両方から作られる電磁エネルギーであります。
その中で、熱放射は、物体が熱を電磁エネルギーとして放出する現象といえます。別名熱輻射などともいわれています。ストーブなどの温める機器がこれを活用しています。
この放射にも熱流束が存在していますが、主に空気間による流速を公式として定義しています。
放射熱流速は、離れた物体への火炎または熱面への放射熱流速として公式があります。
放射に関しては、目標物との距離、火炎の高さ、縦、横の幅から計算します。
しかし、すす粒子群が炎を覆うことにより放射熱流速を減少させ、大きい炎より小さい炎の方が熱流束が強くなることもあります。
公式の精度も±50%程度なので、低めです。ここでは示さず、放射熱流束は煙の濃さ、すすの粒子群、風などの状況によって、変異するということを覚えておきましょう
熱流束
最後は、よく出てきた熱流束について説明していきます。
熱流束は物体に熱を与え、損傷や着火させます。単位はW/㎡です。
- 皮膚の痛み:1.0kW/㎡
- 皮膚に火傷:4.0kW/㎡
- 物の着火:10~20kW/㎡
と実験結果ではありますが、物への着火する 10~20kW/㎡ は、区画内における煙層温度が400℃~600℃まで上昇する。
この煙層温度は対流と放射の測定によって算出されるものであり、煙層の温度は熱流束と大きく関係することを意味します。
これが、フラッシュオーバーが発生する500℃~600℃で起こる現象とつながっているといえます。
今回は熱の伝わり方について説明していきました。
その速度に関しても計算式が存在しますが、伝わり方がそれぞれ違うことを意識することによって、火災の捉え方が変わると考えます。
次のページでは火災③、固体燃料と液体燃料の着火に関することについて説明していきます。