消防活動における吸気排気操作は非常に重要な役割を果たします。
なぜか。
延焼拡大を防ぐことと、屋内の視界を良好にすることです。
煙の操作は延焼拡大を防ぎ、消火活動を円滑にすることができます。
逆に煙の操作を出来なければ、もしくは理解していなければ延焼拡大し、消火活動時間を要してしまうということです。
この機会に煙の吸気排気操作を理解しておきましょう。
排気の仕組み
図で説明するほうがわかりやすいです。
当たり前ですが、煙は常に上昇します。
例えば1階部分の出火点で開口部が少ない建物での火災が発生した場合、煙は上昇するので、天井裏に滞留しますね。
図のように開口部を一つ開ければそこから煙は噴出するのは、イメージできます。当たり前です。
逆に違う開口部を開ければそこから噴出します。
そこから煙は逃げていきますが、天井に溜まった煙は逃げれないです。
では、一番は天井を開ければよいのでは?
もちろんそうです。
図のようになれば、天井が開けられれば煙は垂直に上昇し、下が視界良好になります。これは、垂直ベンチレーションといいます。
しかし、こんな状況を再現できるかどうか。ほとんど難しいですね。天井に上って、屋根を壊さないといけません。かなりハードルが高いです。
そもそも延焼拡大を防止できれば、開口部を開けなければよいのでは?と思う方もいるかもしれません。
煙の操作にはもう一つ利点があります。
それは、内部の視界を良好にすることです。煙を思い通りのところに流出することで、他の部分の視界が良好になります。これが活動時の利点といえます。
吸気排気の関係
例えば、一つの開口部を2階部分に開けた場合、先ほどのとおり2階から排出されます。
では、吸気はどこからされるでしょうか?
一つしか開口部がなければ、入り口も出口も同じです。空気の方が煙より温度が低く密度が低いので開口部の下から流入し、温度が高い煙が上から流出していきます。これが吸気排気の関係となります。
一つの開口部なら窮屈で、内部の視界が良好になるとは思えません。なので、ここから、開口部を変えていきます。
開口部を2階部分に2つ開けた場合はどうでしょう。
図のようにするだけで、煙の出口は吸気と排気の開口部が2つの選択肢が現れました。この時点でどちらが吸気か排気かというのはわかりません。どちらも吸気排気の場合もあります。
また、どちらかの開口部の吸気が大きく片方吸気が小さい場合もあります。
この時点の操作はクアドラで行い風を起こすか、送排風機で起こすしかありません。送排風機は勧められていません。
同じ2階部分に開口部を2つ作ると同じ高さなので、どちらが吸気排気になるかが分からない原因となります。煙は常に上昇するということ、空気の方が煙より温度が低いため、下から流入するということを考えれば、1階と2階に開口部を作ってみましょう。
その場合図のようになります。
この場合1階部分から煙が流出し、2階から空気が流入するということは考えにくいです。
ほとんどの場合2階から煙が流出し、1階から空気が流入されます。このような状態が完成したとき、煙の操作が可能となります。
例えば、延焼してほしくない面を決めて、その面の開口部を出来る限り閉める。でも中で燃焼エネルギーが溜まると進入しにくくもなるので、どこからの開口部を開けることで煙を逃がします。
その面は必ず延焼危険がない面(隣接建物がない方面)です。
しかし、一つだけでは、排気もうまくいきませんし、中の視界も良好にはなりません。
ということで、1階部分の開口部もしくは、2階で必ず吸気側に出来る自信がある場合に開口することで、吸気排気が完成します。これらを理解できると理解できていないでは活動が全く変わってきます。
強制的に吸気排気を作り出す
どうしても1階と2階などの開口部の高低差を作れない場合もあります。
その場合は、強制的に吸気排気を作り出す方法があります。
一つは送排風機、もう一つはクアドラフォグノズルです。
送排風機は、開口部に風を送る方法ですが、開口部の大きさに対する風量と角度を間違えれば、必要以上の風を送ってしまい、内部の燃焼を加速させてしまいます。
なので、クアドラフォグノズルでの強制吸気排気を作り出す方法を説明していきます。
クアドラフォグノズルの風の起こし方はこのページを見てください
図で見る方が分かりやすいですね。片方の開口部から片方の開口部に放水します。
クアドラのタービンティースを回して、風を起こし、周囲の煙を外へ流出します。
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放水器具を活用した強制吸気排気を作り出す技術です。水流ベンチレーションといいます。
このページでは、建物の煙の滞留に伴う、吸気排気操作及び強制吸気排気操作について、説明していきました。ぜひ、参考にしてください。
注意点(一番大事)
開口部を開放することは、空気の流入を増やすため、火災を助長させます。
なので、隊員が屋内へ進入しているときは絶対に開放してはいけません。
しっかりとした、火災戦術がある際に根拠を持った開放が必要となりますので、その点を注意してください。